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てい談 新型インフルエンザに万全の備えを

新型インフルエンザについて語り合う(左から)沢雄二農林水産大臣政務官、参院議員、田代眞人国立感染症研究所ウイルス第3部長、渡辺孝男党新型インフルエンザ対策本部長、参院議員

http://www.komei.or.jp/news/2008/0229/10911.html

 世界中で感染が拡大している鳥インフルエンザのウイルスが人から人へ感染する新型インフルエンザに変化するのは“時間の問題”とも危惧されています。そこで、世界的大流行(パンデミック)時の対策などについて、国立感染症研究所の田代眞人ウイルス第3部長と、公明党の渡辺孝男新型インフルエンザ対策本部長(参院議員)、国会でこの問題をいち早く取り上げ、政府の対策を推進してきた沢雄二農林水産大臣政務官(公明党=参院議員)に語り合ってもらいました。


田代
感染拡大の防止へ国民の理解と協力が不可欠に

医療だけでなく、国家の危機管理にかかわる問題
渡辺
行動計画の再点検など公明党も対策強化に全力


 渡辺孝男党対策本部長 新型インフルエンザは、鳥などの動物に流行する鳥インフルエンザウイルスが突然変異し、人から人への感染力を得た感染症です。鳥インフルエンザの中でも伝染力が強く、強毒性で致死率の高いものが「高病原性鳥インフルエンザ」(H5N1型)で、人への感染が広がっています。

 沢雄二政務官 20世紀に人類は「新型インフルエンザ」に3回襲われています。「スペイン風邪」「アジア風邪」「香港風邪」の三つですが、10年から40年の周期で「新型」が大流行しました。人類は「新型」に対する免疫を持たないので、パンデミックが心配されます。そのため世界では、鳥インフルエンザの段階での封じ込めに全力を挙げています。

 田代眞人部長 そうです。過去に発生した新型インフルエンザはすべて、弱毒性の鳥ウイルスに由来してきました。しかし現在のH5N1型は、強毒型です。

 1997年、香港でH5N1型のウイルスの人への感染が初めて確認されましたが、香港はニワトリとアヒルを全部処分して感染源を断ち切りました。しかし、2004年に東南アジアを中心にH5N1型のウイルスが広がり、そこでの初期の封じ込めに失敗。強毒型のウイルスは、世界中に広がり、定着しました。

 現在、世界保健機関(WHO)の報告では、鳥インフルエンザの人への発症者数の累計は、約360人で、致死率は約63%に上っています【下表参照】。その病態も通常のインフルエンザとまったく異なります。


 渡辺 通常のインフルエンザは、上気道(鼻とのど)でウイルスが増え、症状としては熱が出て、節々が痛くなり、倦怠感やせきが出ます。健康な人なら1週間で回復しますが、抵抗力が極めて弱いお年寄りなどを除けば、命にかかわることはまれです。

 田代 それに対し、H5N1型のウイルスは、感染するとほぼ確実に発症し、半数以上が死亡します。特に、40歳未満の成人、青少年、小児に非常に感染者が多いのが特徴です。

 渡辺 ウイルス感染が起こるとサイトカインストームと呼ばれる一連の生態防御反応(熱が出る、節々が痛むなど)が起きますが、若く、健康な人ほど、その反応が過剰なために、かえって臓器を傷つけ、多臓器不全という危険な状況になってしまうからですね。


時期は不明だが発生は不可避

 沢 90年前に「スペイン風邪」が大流行した時、日本は約43%の感染率で、1年間で45万人もの犠牲者を出しました。しかも、当時の輸送手段は、船か汽車でしたが、現在は航空機で世界中が結ばれています。「スペイン風邪」は、約11カ月で世界中に広がりましたが、空気感染する新型インフルエンザは、1週間で瞬く間に広まるとされています。通常のインフルエンザとして対応すると、大きな過ちを犯します。

 田代 新型インフルエンザはいつ発生するかは不明ですが、発生することは避けられません。鳥のウイルスは高温で増えやすく低温で増えにくいのですが、むしろ人の体温で増えやすいように変化したウイルスも多数見つかっています。まさに人類は“時限爆弾”の上に座ったまま、ずっといなければならない状況にあるのです。

 沢 各国が大流行に備え、健康被害の推定をして、それに基づく対策を準備しています。例えば、米国は30%、カナダは35%が推定感染率ですが、それらの国より人口密度が高い日本は25%と低い推定です。

 田代 厚生労働省では、その2%に当たる64万人が死亡すると試算しています。しかし、各国の推定は「スペイン風邪」を「最悪の事態」と想定したものです。「新型」が「最悪」を超える可能性は高く、備えを急がねばなりません。

 渡辺 大流行時には、患者に接する医療従事者が感染し、医療サービスが維持できなくなる可能性があるため、欧米では、医学生や看護学生、薬剤師、獣医師なども緊急事態時に医療サービスを補佐できるような計画を立てています。


米国は大流行時に「ろう城作戦」

 沢 米国など多くの国では自宅での「ろう城作戦」を取ります。感染を防ぐには人と接触しないのが一番いいわけです。米国では10日分程度の食料、日用品などを各家庭で備蓄するよう強く勧告。学校も閉鎖しますが、自宅で勉強ができるよう学年別のカリキュラムまで作成しています。

 田代 企業にとっても深刻な問題です。欧米の企業では、大流行時の経済活動を保持し、社会的責任を果たすために、どうやって社員を出勤させずに在宅でビジネスを続けるか、そのためにはインターネットの回線数をどれだけ確保するかなど、詳細なプランを作っています。また、感染拡大を防ぐには、国民の行動の自由も制限せざるを得ません。ただ、現在の法律では強制はできませんので、国民の理解と協力が不可欠です。こうした対策を事前にやっておかないと、パニック状態になってしまいます。

 沢 パニックを防ぐには、正確な情報を国民に伝えるため、マスメディアの役割も重要です。二次的被害として経済・社会活動の停滞も懸念されます。日本の経済損失は1年間で約20兆円との試算さえあります。新型インフルエンザは医療だけの問題ではなく、国家の安全保障・危機管理にかかわる問題です。

 渡辺 日本では、行動計画に沿って、予防投与を行うためのタミフル(治療用の抗インフルエンザウイルス薬)を2800万人分、流行初期に接種するプレパンデミックワクチン1000万人分の備蓄などが進められています。昨年は人から人への感染が確認された段階で、行政や医療機関、企業、個人が取るべき具体策をまとめたガイドラインがつくられました。

 今年(2008年)1月には、自民、公明両党の与党鳥由来新型インフルエンザ対策に関するプロジェクトチーム(PT)が発足しました。国の行動計画を再点検し、対策強化に取り組んでいきます。

 田代 ワクチン開発は技術的には確立していますが、短期間で全国民分のワクチンを用意するのは難しい。また、接種するためのインフラ(基盤)整備も、不十分です。対策には迅速な行動が求められます。

 渡辺 昨年(2007年)1月、宮崎県内で高病原性鳥インフルエンザが発生した際には、公明党も党宮崎県本部が県に緊急要望し、党対策本部も迅速なワクチン開発・生産体制の確保などを安倍晋三首相(当時)に要請。また、昨年3月の沢議員の国会質問を受け、政府は同10月、新型インフルエンザ発生時に、首相を本部長とする「対策本部」を設置することを決定しました。


 田代 公明党は、厚生行政に対する経験、基盤があると思います。日常生活に密着した政治を方針として掲げています。与党PTの中でも、リーダーシップを発揮し、新型インフルエンザ対策の準備が十分に進められるようにしてもらいたいと思います。

 沢 外国から食料が輸入できない事態も考えられますので、農林水産省としても食料供給体制の検討を始めました。新型インフルエンザは、社会のあらゆる分野に影響を与えますから、首相主導の強力な体制を構築できるよう、しっかり取り組んでまいります。

 きょうは貴重なお話をありがとうございました。

<たしろ・まさと> 東北大学医学部卒。現在、国立感染症研究所ウイルス第3部(インフルエンザや麻しん、風疹ウイルスなどの基礎研究や予防治療法の研究などを行う)部長を務め、WHOインフルエンザ協力センター長を併任するウイルス学の第一人者。医学博士。

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